「ダイビングといえば?」ダイバーの皆さんはどんなことをイメージしますか?「非日常の水中世界」「魚の群れ」「美しい珊瑚」など、とにかく楽しいイメージが先行しますよね!では、「レスキューダイバー」と聞いたときには、どんなことをイメージしますか?
「上級ダイバー」「何かあったときは助けに行く」もしかしたら「かっこいい」などの印象がある人もいるかもしれません。
「ダイビング中に起こりうるトラブルを予防し、発生した場合にも冷静に対処できる」これがレスキューダイバーです。
ダイビングって楽しい!そんなイメージから、急に難しそうな雰囲気になりましたが、実際コース受講の難易度はどうなのでしょうか?今回は、「PADIレスキューダイバーコース」がどんなことを学ぶのか?合格は難しいのか?その難易度について解説していきますね!
この記事を書いたプロフェッショナル
2023年度エリートインストラクター受賞。
- PADI マスタースクーバダイバートレーナー
- 各種スペシャルティインストラクター
- 看護師
- 潜水士
結論:難易度は決して高くない!
レスキューダイバーコースの難易度は決して高いものではありあせん。
しかし、クリアしなければならない課題が明確にあり内容は盛りだくさんです。
PADIレスキューダイバーコースを受講するみなさんは、既にオープン・ウォーターとアドバンスド・オープン・ウォーターのスキルを習得しています。改めて「レスキュー」と考えると少し難しいイメージがあるかもしれませんが、スキルをアップデートするイメージを持ってもらうと良いかもしれません。
レスキューダイバーコースは誰でも受講できる?
レスキューダイバーに限らず各ライセンスの取得には参加前条件があります。簡単にお伝えるすとレスキューダイバーコースの参加前条件は下記の2つです。
- PADIアドバンスド・オープンウォーター・ダイバー取得済み(他団体はPADIアドバンスと同等のライセンス)
- エマージェンシー・ファースト・レスポンス (EFR)プログラム修了者または同等の修了者(過去24ヶ月以内)
レスキューダイバー受講前にはEFRライセンスの取得が必須です。24ヶ月以内という有効期限があるため注意しましょう!
レスキューダイバーコースの内容
レスキューダイバーでやることは大きく3つに分かれています。
ダイビング中に起こるトラブルの原因は病的な体調変化もあれば、不安やストレスからの精神的パニック、器材トラブルなど様々です。様々な状況に対応できる知識とスキルを段階的に習得していきます。
- 知識を身につける
e-Learningで事前学習ができるため自分のペースで進められます。知識の最終確認として現地で学科試験を受けてもらいます。余裕を持って学習しておきましょう。 - 知識を応用してレスキュースキルを身につける(海洋実習)
スキルは10種類のレスキュー課題があり、シミュレーションをしながら実践していきます。
「10種類もあるの?」と思うかもしれませんが、1つ1つのスキルがシンプルにまとめられているため達成感を得ながら進められます。 - 学んだレスキュースキルをシナリオの中で実践する(海洋実習)
一通りのレスキュースキルを習得してもらい、最後はリアルな状況を作りスキルを実践してもらいます。例えば、ファンダイビング中に突然意識をなくしてしまったダイバーの対応などです。
スキルは必ず習得できる?
10種類の課題は、すぐに習得できるものから少しテクニックが必要なものまで様々です。
私自身が生徒ダイバーとして受講したとき、そしてインストラクターとして講習する側になってからの体験をもとに各課題の難易度をまとめてみました。参考までにご覧下さい。
課題 | 内容 | 難易度 |
---|---|---|
1 | 疲労ダイバー | 1 |
2 | パニックダイバー | 1 |
3 | 浜、ボート、桟橋からの対応(反応があるダイバー) | 2 |
4 | 水中でトラブルに遭遇しているダイバー | 2 |
5 | 行方不明ダイバー | 3 |
6 | 反応のダイバーを浮上させる | 4 |
7 | 水面で反応のないダイバー | 5 |
8 | 反応のないダイバーのエキジット | 4 |
9 | 圧力に関連する事故のファーストエイドと酸素供給 | 1 |
10 | 浜やボートからの対応(反応のないダイバー) | 4 |
【難易度1〜5について】
「1」「2」は対応方法がわかればすぐに習得できるスキルです。(課題9は実物を用いての口頭説明です)
「3」はコンパスの使用方法とサーチパターンの理解が必要です。
「4」はレスキューコースならではの新しいスキルになり、少しテクニックが必要です。
「5」は、生命維持に直結するスキルです。水面で呼吸をしていない事故者に対し必要な対応を施しながら安全な場所(浜やボート)まで移動させます。完璧を求めるスキルではありませんが、スキルの方法や手順を十分に理解している必要があります。
難易度「5」である課題7は、私自身も何度も練習しました。少し難しいスキルですが必ず習得できるよう指導します!
レスキューダイバーライセンスは必要?
この記事を読んでいる人は、おそらくアドバンスド・オープン・ウォーターライセンスまで取得されている人が多いと思います。「今のままで楽しいし、これ以上のライセンスは必要?」と思う人も多いのではないでしょうか。
ここで少し、レスキューダイバーになるメリットを考えてみましょう!
レスキューダイバーになるメリット
- 自身の安全性が高まる
レスキューダイバーのスキルは正しい対応方法を学ぶことで自分自身の安全も確保できるようになります。(二次的トラブルの回避) - トラブルを未然に防ぐスキルが身につく
受講中にシミュレーションをしながらスキルを身につけるため、トラブルを予知し事前に対処することやトラブル発生時にも冷静に対処できるようになります。 - 緊急事態での対応力が身につく
発見時のダイバーの状況に応じた様々なレスキュー方法を学ぶことで、適切な対応を判断できるようになります。
自分自身の安全管理能力が高まることは安心感に繋がります。また、レスキューダイバーが増えることでダイバー同士が互いに助け合うことができれば、それほど安心なことはないですよね!
レスキューダイバーになると自分以外のダイバーを気遣う意識が芽生えます。ダイバーとしての視野も広がりますよ!
まとめ
今回は、レスキューダイバーコースの難易度について解説させて頂きました。
難しいイメージを持ちやすいレスキューダイバーですが、実際にどんなことをするのか、またそれぞれのスキルの難易度をまとめてみると、決して難易度は高くないことがわかったと思います。
ダイビングは水中という特別な環境下でのスポーツです。万が一に備えて対応できるスキルや知識を持っておくことは、とても大切です。レスキューダイバーコースは、ダイバーとしての自信を高めるとともに最も達成感のあるコースとも言われていますよ!
「レスキュー」という言葉を難しく捉えず、「レスキューダイバーがなぜ必要なのか」を考えてみましょう!
一人でも多くのレスキューダイバーが誕生し、ダイビングの安全性をより高めていけたら嬉しいです。